私の手元に、赤いクリアファイルがある。
ファイルの中身は、ユーフォニアムのソロ楽譜。
赤は、情熱や興奮を表す色。もし私がソロ演奏を披露する機会があるならば、その時はエキサイティングな演奏をしたい―そう思いながら、楽譜用カバンの中にこっそりと(いや、堂々と!?)忍ばせてある。

私が初めてソロの楽譜を購入したのは、大学の吹奏楽団に所属していた時のこと。
当時、ある先輩が楽譜を見せてくれた。その曲が、フィリップ・スパーク作曲の『パントマイム』。
―おお、見事な16分連付。テンポがゆっくりな部分でも、リップスラーが難しそうだ―。
さらに、先輩はこう言った。
「俺は、この曲が世界一難しい曲だと思うんだ。」

だったら、私が吹いてみせる。世界一難しい曲が吹けるなら、この先どんな曲でも吹くことができるようになるだろう―。
当時の私、アホすぎる(笑)…若いって、こういう事なのか?
一週間後、私は自分でその楽譜を入手した。
そして、大学にいる間、日々のウォームアップとして吹き続ける事となる。

ちなみに現在では、少し抑えるようになった。最近は主に『パーティー・ピース』を吹くことにしている…って、何も変わっていない(笑)
この曲も、フィリップ・スパークの作品。パントマイムよりは楽だと思うが…本当に楽なのかは微妙だ。
これぞ「三つ子の魂百まで」というやつか。

さて、舞台を現在の楽団に戻す。
数か月前、ある飲み会での事。一部のメンバーが集まり、何やら話をしている。
どうやら、内容は「イレギュラーコンサート」の企画のことらしい。
イレギュラーコンサートとは、元々はアンサンブルコンテストの団内予選を兼ねた、小規模な演奏会であった。
(「放浪記」の内容で言えば、「ハーレクイン事件」とその後の「対決」)
しかし昨年、規模を拡大。前回の目玉は、「英国式ブラスバンド」の編成によるステージであった。

今年のイレギュラーコンサートの目玉は「ソロまたはパートのための協奏曲ステージ」となるようだ。
私も話に加わってみる。
そのメンバーの中に、副団長(男)と司会者がいた。
副団長はトロンボーン吹き、司会者はクラリネット吹きである。
この2人それぞれのパートが活躍する、トロンボーン協奏曲とクラリネット協奏曲を演奏するとのこと。
―おお、それはすごい。私はのんびりと話を聞いていたのだが…司会者がこう言ってのけた。

Tassanic は、ソロでトリを務めるってことで(笑)」

―おっと!?まあ、飲みの席の話だからな。
その時は、はっきり言ってトリの件は冗談だと思っていたのだ。

数日後の合奏の際、司会者が、私に話しかけてきた。
「Tassanic、何かやってくんない?」
―なんと!?あの話、本気だったのか。

新たなる波乱の舞台が、幕を開ける―。

続く