演奏会で、本当にソロを担当することになった私。
さて、どうするか―。

まず、どの曲を吹くのかという問題があった。
私の手元には、フィリップ・スパークの曲が3曲。
『パントマイム』。
前回書いた通り、半ば勢いに任せて買った曲である。
かつての練習の賜物か、それなりには吹けるのだが…本番の舞台で演奏するにはリスクが高すぎる。
『ハーレクイン』。
この曲、難易度も高いが、値段も高い(笑)
ピアノ伴奏版なのだが、5,000円する。
購入には、清水の舞台から…は言い過ぎだが、それなりの覚悟が必要であった。
『Song for Ina(アイナの歌)』
技術的な難易度で言えば、比較的簡単。
その分、基礎的な演奏技術や表現力、さらに言えば音楽性や芸術性が問われる曲である。
この曲は、今回は見送ろうと考えた。その理由は以下の通りである。
個人的には、この曲は、誰か大切な人のために贈る曲であると考える。恋人、あるいは家族といった感じか。
また、自分で数曲演奏できるならばこの曲も良いが、一曲のみだと少々パワー不足かなとも感じられた。

そして、この3曲に共通して言えることだが…聴いてくれるお客さんが理解できるか、と言うのが最大の問題であった。
例えば16分音符が並んでいるフレーズは、聴く側にとっては何がなんだか分からない場合があるのではないか?
実際に、私は大学時代、演奏会に来てくれた友人からこんな事を言われている。
「何だか分からないけれど、すごかったね。」
確かにその友人は吹奏楽関係者ではなかった。また、当時の吹奏楽団の技術的な限界もあっただろう。
しかし、そう思われたままなのは残念ではないか―?
自分に選択の余地があるのなら、やはり、聴いてくれる人にとってわかりやすくて、楽しめるものを準備したい―。

ここで私は、ある曲の事を思い出す。
以前一回だけ聞いて、なかなかいい感じだなと思った曲があることを―。

ゴブ・リチャーズ作曲の『ミッドナイト・ユーフォニアム』。
入手したCDを聞いてみる。―やはり、私の記憶に間違いは無かった。それに、これなら伴奏の負担も軽いはずだ―。
まずは自分でピアノ伴奏版を購入。
―これならば、十分に吹きこなす事ができる。
楽団による購入が承認されたところで、吹奏楽版の楽譜セットを手配する事となった。

曲が決まった事で、私の腹も決まった。
だが、ある女性の登場により、死闘はさらに激化していく―。