先日、ある中学校に行ってきた。場所は、今の住処の近くである(母校ではない)。
目的は、演奏技術の指導である。特にコンクールで『吹奏楽のための民話』(J.A.コウディル)を演奏するので見てほしいとの事だ。
ウチの楽団からは、クラリネット、サックス、トランペット、パーカッション、そして私の5人が参加した。
ちなみに私は現在、ある事情によりトロンボーンを吹いている。
よって、私はトロンボーン、ユーフォニアム、テューバの3パートをまとめて指導することとなった。

私が指導に出向いたとき、まず、真っ先にやることがある。
それは、マウスピースを楽器から取り外して凹みの確認をさせること。凹みがある場合は、間違いなく音質に問題が生じるからだ。
全員に、マウスピースは大事に扱う、特に落とさないようにと注意を促す。
そして、凹みがある場合はすぐに楽器屋さんにお願いして直してもらうこと、直すにはそれほどお金がかからないことを伝える。
ちなみに、私がかつてお願いしたときには100円で直してもらえたし、音質も劇的に向上したということがあった。

次はチューニング。B♭の音を吹かせてみる。実は、この時点でだいたいの人の問題点が見えるのだ。
今回の生徒さんはどうか。テューバの1人は問題なく音が出せている。
トロンボーンの2人…まず、姿勢が悪いな。猫背はダメだ…とりあえず、背筋を伸ばすよう伝える。
(厳密には、伸ばしすぎて固まるようだとマズイのだが、簡易的にはこれでいけると判断。)
少し、音質が向上。一人は初心者のためか、チューニングB♭の時点で少してこずっていたが…こればっかりはすぐにはどうしようもない。練習あるのみだ。
そして、ユーフォニアムの2人を見る。1人、明らかに楽器の持ち方がおかしい。
左手を、マウスパイプの下側にかけているのだ。本来はその反対側(楕円の向こう側)を持つのが正しいのだが…。私はこう言った。
「3番ピストンのパイプを持ってみたらどう?」
小柄な人だと手が届かない場合もあるのでその位置にしたのだが、やけにやりにくそうだ。
姿勢を変えるときも、楽器を落としそうになっていたのに違和感を感じたのだ。
その左手を見て、私は、ある事実に気が付く。落ち着いて、こう言った。
「君は、元の位置の方が良さそうだね。」
―私は、このようなケースに遭遇するのは楽器人生で始めてである。おそらく彼は、左手が若干不自由なのだ。これは推測だが、指に力を入れられない場合があるのではないか。
だからこそ、後輩が太管でサイドアクションの楽器を使い、彼自身は YEP-321 を使うことで対応しているのだと。
もし私が、「それじゃダメだ」などと言っていたのなら、少なからず彼を傷つけてしまっただろう。
否定するのではなく、より良い方法を示す。その心がけが、図らずもお互いを救うこととなった―。

もう一度全体でチューニングをし、いよいよ『吹奏楽のための民話』に取り組んでいく…といったところで、長くなりそうなので残りは後編、ということにする。

続く