Making TASSANIC WORKS

ある「楽器吹き」の物語

YEP-842S放浪記

YEP-842S放浪記 (01)

YEP-842S を購入することになった私。
新しい楽器人生の幕開けである―。

今回購入する楽器は、ウチの指揮者と親交のあるプロ奏者の方に頼んで選定してもらい、直接指揮者の元に送ってもらえるとの事。
話によると、販売店を通さないため、1週間で手元に届くらしい。
―1週間!?私は耳を疑った。
私がかつて YEP-321S を購入した時は、8ヶ月待つことになったのだ。
しかも楽器のランクが低いため、プロ奏者による選定は受けられないとの事。
楽器屋の計らいにより、2台のうちから1台選ぶということはできたが。現在では、買うとしても YEP-621S(太管モデル)以上が主流で、321S はなかなか出ないとの事であった。そのため、長くかかってしまったというのもある。

後に聞いたところによると、この個体を選定した日ははたまたま 842S がいつもよりも多く生産されており、6本の中から1本選んだとのことであった。
―愛されてやがる、天に―。

予定通り、楽器は1週間で指揮者の元に到着し、私のところには…徒歩で直接持ってきた(笑)
指揮者の自宅は、私の住処から徒歩で約3分である。
何はともあれ、無事に楽器を受け取ることとなった。ケースを持ってみる…重い。
YEP-842S と 321S の違いの一つは、「コンペンセイティング・システム」の有無である。
コンペンセイティング・システムとは、低音域の音程を補正するものである。そのための補正管が楽器に搭載されるため、全体の重量が増えるのである。

ケースを開けてみる―正直、目を奪われた―。
321S と並べて置いてみる。見比べていたら…30分が過ぎていた(笑)
見ていて気が付いたが、どうやら「BUZZ ボトムキャップ」と同じ機能が搭載されているようである。
さて、肝心の音の方はどうか。だが、私の住処は勤め先の寮なので、今思いっきり吹いてみるわけにはいかない…次の合奏までお預けである。

ちなみに代金の方は、頭金+分割12回払い(月額3万円!)を認めてもらったため、即座に生活に困窮するという事態は避けられた。まあ、結果として定期預金を使い果たす羽目にはなったが…(笑)

YEP-842S を無事に手にした私。
次回は、いよいよ 842S 片手に合奏に乗り込む―。

YEP-842S放浪記 序章

私は、重大な決断を下そうとしていた。
それは、YEP-842S を手にすること―。

その楽器の情報は、楽団ホームページの団員専用掲示板で発表された。
内容は、ウチの指揮者と親交のあるプロ奏者が、新品の YEP-842S を1台選定する機会があるので、誰か購入しませんか、というもの。
しかも、破格であった。詳しくは述べないが、私がすでに所有している YEP-321S の購入金額と合計しても、新品価格を下回る程だ。
だが、それでも結局は50万円以上のお金を動かすことになり、私がもし購入した場合、貯蓄が全く無くなってしまう。…無計画な若者の仲間入りである(笑)
そのため、かつてのウィルソンの時と同様に、購入を見送る旨を指揮者には伝えた。

一週間後、アンサンブルコンテストの団内予選。私のチームは果敢に挑むも、予選突破はならなかった。
終了後、審査してくれた方と話す機会があり、私の演奏についても評価してしていただいた。しかし…、
「技術は上なのだが…、音色がウィルソンに負けている。」
また、指揮者はこう言った。
「楽器を変えるだけで簡単に音色を良くする事ができるなら、それも1つの方法だ。また、君はそうするべきプレイヤーだと思う。」

この2つの台詞は、次の日も、私の頭から離れることは無かった。
音色に関しては、楽器の限界もあるかもしれないが、私の鍛錬が足りないという事も大きいと思われた。
私自身は、321S を極めてから次の楽器に移るべきだと考えている―。
しかし、新しい楽器を買った方がいいと言ってくれる人も少なからずいる―。
一日中考えとおして、私は結論を得る事となる。

842S でできる事を、321S でもやって見せる。そのために、842S を勉強してみるのは悪くない―。

だが、購入のためには定期預金を使い果たす必要があった。普通に考えれば、頭がおかしいと言われても仕方が無い(笑)
自分が正気かどうか確認するため、我が母に電話してみることにした。もしこの選択が間違いならば、止められるはず―。
しかし、この件に関する第一声はこうであった。
「だから、最初から高い楽器を買っておけばよかったのに(笑)」
私は、321S を購入する際も母には連絡していた。その時は、高い楽器を買って失敗したら目も当てられない…と私は言っておいたのだが。
さらに母は、こう続けた。
「私の目から見て、あなたは、無駄遣いをする人ではない。」
―母さん、ありがとう。私は、腹を決めた。

すぐに、指揮者に電話。どうやら、そのプロ奏者と直接やり取りをするらしい。
30分後、指揮者から連絡があったのだが、その内容は衝撃的なものであった。

その楽器、売れちゃった(笑)」

どうやら、一日のタイムロスは大きかった。チャンスの女神は、待ってはくれないのだ。やはり、特別な楽器はそれにふさわしい人の下へ行くのだろうか。
私にとっては、まだ「その時」では無かったようだ。まだまだ、YEP-321S で修行する必要があるということか。

だが翌日、事態はさらに急転する。またもや指揮者から電話が。

「そのプロの人、もう1本選定するって。」

―!?

かくして、新たなる放浪の旅が幕を開ける―。
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